テテモウという生き方1
ミャンマーの芸能人のことを書いてみよう。ミャンマーの女優、男優、監督と誰を一番に書いてみようかと思った時、やっぱりこの人以外にいないだろうと思った。テテモウその人である。
一度真正面でお話を伺ったことがある。ヤンゴン外国語大学大学に通っている頃、ある旅行会社のブログを書かせてもらっていた時期があった。私が住むビルにその旅行会社があったのだ。そこに3回連続で『テテモウの謎』というエッセーを書いたら、思った以上に反響があって、NHKの方から彼女を撮りたいとオファーがあったそうだ。テテモウはすでにその時点で、日本のとある企業のCMも撮り終えていた。NHK の要請に応じてのインタビューを行うという事で、旅行会社の社長から、「清岡さんも同席しませんか?」と誘われて、当時ミャンマーNo1の日本語通訳の男性と、こちらは4人、テテモウは、再婚した2番目か3番目の夫と一緒だった。ストランドホテルのグランドフロアーにあるCafeで行われた。
ミャンマーのスターは、これは日本でも同様だが、意外に実際に会うと小柄だったりする。テテモウも小柄だったが、当時人気絶頂期で、ヤンゴンに住む日本人は、ほとんどの人が「全然美人でないのに、なんであんなに人気があるのかわからない。」と言われていた。しかし、本人を目の前にすると、やはり確かに美人だった。それから印象に残ったのは、声がちょっとは何か鼻にかかった甘い声で、何か独特の声なのだ。ミャンマーの女優さんは、えてして声が悪い。その中にあってテテモウはその庶民性もあるが、この声の魅力も外せない。インタビューの内容も不思議とよく覚えている。しかし、付き添いできていた夫が出しゃばって、オーストラリアの大学出たかどうか知らないが、英語でバンバン話を進めてきた。それで、テテモウとの話が、うまく進まなかった記憶がある。その後旅行会社の社長とスタッフの女性が彼女の家まで、具体的な話を詰めるために後日伺ったら、その夫とすごい喧嘩の最中で、その後テテモウが電話に出なくなって、NHKの話はそこで消滅したと聞いた。そして、その夫ともその後離婚したそうだ。
※そのテテモウの家に行った女性スタッフに電話で確認したら、テテモウがNHKの出演のギャラを聞いてきたらしい、それと当時の軍事政権は、俳優として外国の映画やCMに出演は認めるが、個人のドキュメンタリーやインタビューは許可が下りないと言われて、それで撮影できなかったらしい。
1998年の3月からヤンゴンに住み出した。すぐにテレビを買った。チャンネルを回すも2局くらいしかなかったと思う。いつ見ても、どちらの局にも、テテモウはCMに出ずっぱりである。ある日本女性が言っていたことが面白い。当時軍事政権のミャンマー、CMはこの人と決められていると思っていたそうだ。テテモウのCM10連発など毎度の事で、2000年だったか、日本では藤原紀香と小泉今日子がCM女王を競っていて年間11本という数字であった。テテモウは、最近のインタビューで1000本はテレビCM 出演したと言っていた。ポスターやお菓子の袋の写真やなどを入れると、年間どれくらい撮影しているか分からない。また同業他社のCMにも複数出演している。SONYとPanasonicライバル社のCMに2つとも出演など日本では考えられないが、そんなの全くお構いなしだ。どの会社もテテモウを起用したい、それが一流企業の証になっていた時代。
ある時、ヤンゴン外国語大学の同級生の暮らすグランドミヤター(今は取り壊されて無くなっている)を訪問したら、2階にあったジムで、テテモウのCMの撮影があっていった。誰からも止められなかったので、至近距離から撮影風景をカメラに収めることができた。その場にいたクラスメイトの女性も、あそこまで照明が近かったら、私でも綺麗に映るんじゃないのと言っていた。それくらい左右の照明がものすごくテテモウに近いかった。
彼女はミャンマーのアカデミー主演女優賞を2回受賞している。1日で撮り終えるCM撮影と、映画撮影となると1ヶ月以上拘束されることも多い。それなのに、CM一本のギャラと映画出演のギャラはほぼ同額だという。それでテテモウは実を取ってCMの女王として、人気絶頂期を迎えていた。
庶民的な魅力のテテモウは、CMに「演技」を導入した最初の人という見方もある。それまで、美人の女優さんが、製品名を言うだけのCM から、ストーリーとか演技を盛り込んだ独特の魅力で、10年以上誰も抜くことができないCM界の女王に登りつめたのだ。
そんなテテモウだが、もう一回会ったことがある。バンコクに行く飛行機の中にいた。あの喋りの夫と一緒で、なんでもバンコクの病院に病気治療に行っているとかで、その後彼女の顔を見るのが、少しずつ少なくなってゆく。体調がその後も良くなかったらしい。でも10年以上もトップ街道を疾走していたテテモウである。その後、歌手のアナガーと結婚して、すぐに離婚。4番目の夫は、パッパラパーの若いモデル男と聞いていた。テテモウはそれほど馬鹿じゃないので、実はこのモデル男、頭もいいし、家柄も悪くなかったようで、女の子も生まれたが、10年連れ添ったこの男とも離婚したと最近聞いた。しかも、一人娘は(夫にそっくり)は、夫の方が親権を得たようである。
ミャンマーのほとんどの女優さんが、30歳半ば頃から、ものすごく太ってくるのだ。ミャンマーの松田聖子と思っていたチッレレウーも、ゴージャスな美人女優のナンダーラインも、結婚後ものすごく水牛のように太ってしまい。ほとんど引退状態の現在である。テテモウも随分太って、CM界からも映画界からもその姿が消えたかのように思われていた。
2につづく
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